ステントグラフト内挿術を選択しづらい弓部は、大動脈が心臓から出てUターンする箇所であり、脳へ行く3本の血管が枝分かれしている箇所でもある。この近くに瘤があると、心臓や枝分かれした血管(分枝血管)のために、血管とステントグラフトを十分に密着させるだけの健康な血管の長さを確保できなくなる。ステントグラフト留置により分枝血管を塞いでしまうおそれもある。

■弓部に適用できる 開窓型ステントも

 では、弓部にはステントグラフト内挿術は使えないのか。

 最近では、ステントグラフト内挿術を、弓部大動脈瘤に対しても使用できるようにするための治療法の開発が進んでいる。その一つが分枝血管の部位に穴を開けた、開窓型と呼ばれるステントグラフトだ。現在、保険適用となっており、日本発の技術として注目されている。

 海外では、枝分かれした血管の形状にしたステントグラフトも使用されているが、国内ではまだ保険適用外である。

 大動脈瘤は、破裂する前に見つけることができれば、治療を受ける病院や治療の方法を選べる病気である。その選び方を志水医師がアドバイスする。

「ステントグラフト内挿術と手術のどちらかに偏っていると、患者さんの状態にかかわらず、その病院の得意とするほうを選択せざるをえなくなります。できれば両方の治療法に実績がある病院を選んで、それぞれの専門医に診てもらうのがよいでしょう」

なお、胸部大動脈瘤の治療も含む心臓手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。
手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・近藤昭彦)

≪取材協力≫
慶応義塾大学病院 心臓血管外科教授 志水秀行医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より