見る前に「切ない」方向か「明るい」方向かを把握、心の準備をするのがよいと思う。道標となるのが、「寡黙ヒョンビン」か「能弁ヒョンビン」か。前者が圧倒的に切ない。
時系列で振り返ると、「寡黙」と「能弁」が交互に現れる。つまりヒョンビンは、変化を求める人なのだと思う。当たり役に出会っても、次は違うものを選ぶ。常に挑戦する。だから視聴率が低い時もある。それでも挑戦をやめない。その姿勢がわかる。
主演第1作の「アイルランド」(2004年)は、抑えめだが「能弁ヒョンビン」。次の「私の名前はキム・サムスン」(05年)は最高視聴率50.5%を記録した出世作。御曹司役で年上パティシエ相手に、テンションを上げてしゃべる。「雪の女王」(06~07年)が「寡黙ヒョンビン」の始まりだ。財閥の娘を愛する貧しい青年、しかもある体験から罪の意識をまとっているという役で、もうずっと哀しい。次の「彼らが生きる世界」(08年)は、テレビ局のドラマ監督役。日本の「トレンディードラマ」に近い雰囲気だが、ヒョンビンは明るさ、能弁さの後ろにある屈託、屈折を見せるから、深みがある。韓流ドラマってすごいなあ、と思う。
「チング~愛と友情の絆~」(09年)が超寡黙、「シークレット・ガーデン」(10~11年)が最高視聴率37.9%のラブコメディーで、もちろん能弁。御曹司は「私の名前はキム・サムスン」以来のヒョンビンの当たり役。個人的にはこのドラマがすごく好きで、現在2周目を視聴中だ。
次の「ジキルとハイドに恋した私」(15年)も、財閥の御曹司役のラブコメディー。もちろん能弁でここだけ「交互」でなくなるが、そこには事情が。11年3月から12年12月までヒョンビンは海兵隊に入隊、兵役義務を果たしたのだ。当たり役の御曹司で、4年ぶりのドラマ復帰。沼の先輩方は沸き立ったに違いない。
さて突然ですが、ここで一つ注意喚起のため、我が「チング~愛と友情の絆~」体験を披露させていただきます。記録的大ヒット映画「友へ チング」(01年)のリメイクドラマで、ヒョンビンはチャン・ドンゴン演じたヤクザのドンス役。映画をご覧になった方も多いだろうし、ドラマの初回冒頭で明らかになることだから書いてしまうが、これは「ヒョンビン(っていうか、ドンス。以下略)が死ぬ」とわかって見るドラマだ。それだけでつらい。