少なくとも一部については無罪になるだろうと思っていましたから、今回の判決には驚きました。結論にいたる事実認定もかなり一方的で不当だと思います。

 この事件の被告ではない小沢一郎・民主党元代表にまで言及して断罪している。

 ロス疑惑で三浦和義さんの弁護をした時も痛感しましたが、中立であるべき裁判官も世論や報道の影響をまぬがれない。裁判所は小沢さんに対し"やっつけるべき相手"というイメージを持っているのでしょうか?

 土地購入の原資として小沢さんが用立てた4億円について「明快な説明ができていない」から"怪しいカネ"だと決めつけています。これは、ポケットに大金が入っている人を捕まえて、どこから出たお金かを説明しなければ、「泥棒だ」と決めつけるようなものです。不審な点があると考えたのなら、小沢さんを証人として呼んで聞けばよかったのです。

 さらに裁判所は、何の客観的証拠もないまま、一方の証言だけで、水谷建設から小沢事務所へ裏献金があったと認定している。そして、そのカネを隠蔽(いんぺい)するために、石川知裕衆院議員(当時は秘書)は4億円を04年の収支報告書に記載しなかったのだとしています。

 しかし、そもそも、石川さんが小沢さんから4億円を受け取ったのは04年10月12日とされています。他方で、検察によれば、水谷建設から石川さんへ5千万円が渡ったのは10月15日とされている。事後に受け取ったカネを隠す目的で、それとは無関係の4億円を隠すなどというのは、論理として破綻(はたん)しています。

 裁判所とは本来、証拠に基づいて判断するところです。ところが、この判決を読む限り、証拠ではなく根拠のない推論を重ねて判断しています。裁判所としての役割を大きく逸脱していると思いますね。

 この判決の、小沢さん本人の裁判自体への影響はないでしょう。裁判というのは証拠に基づいて、検察官の主張する事実の有無を判断するものですが、二つの裁判では証拠も検察官の主張も大きく異なっているからです。 (聞き手 本誌・大貫聡子)


週刊朝日