「特に寝たきりの原因となる大腿骨近位部骨折は、注意が必要です。骨折と診断されたら基本的に手術をする必要がありますし、その後のリハビリテーションも重要です。術前に元気で歩けた人であれば、手術でほぼ元通りに回復可能ですが、もともと歩行能力が低かった高齢の方だと、歩けなくなることも少なくありません。そして多くの方が要介護になります」

 一度、大腿骨近位部骨折を起こすと、次の骨折を起こす確率が2倍になる。80代に多く、受傷後1年で約20%の人が亡くなり、その後も毎年1割ずつ亡くなる。

 医療費の問題もある。手術・入院などの急性期の治療費で約150万円、その後の介護費用で年平均約150万円かかる。たとえば骨折後7年までに1200万円かかる。国家の医療費という面で見ても、現在、年間20万人が大腿骨近位部骨折に見舞われているため、急性期治療費だけで年間約3千億円がかかるという計算になる。

「将来の骨折を予防するためには、骨粗鬆症の発症を予防すること、早めに察知すること、必要な治療をしっかり始めて続けることが大切です」(石橋医師)

 骨粗鬆症の原因は、女性の場合は閉経期の女性ホルモンの減少だ。男女共通の原因は、加齢、カルシウムの摂取不足、運動不足、飲酒や喫煙といった生活習慣に関連している。また遺伝的に骨量が少なく骨粗鬆症になりやすい場合もある。甲状腺の病気や糖尿病、腎臓病やステロイド剤の長期服用などで発症する続発性骨粗鬆症もある。

 骨粗鬆症の診断は骨折の有無と骨密度の数値による。前述の骨粗鬆症に多い骨折を既に起こしていたり、骨密度が若年成人の70%未満で骨粗鬆症と診断される。

 現在、骨粗鬆症の診断の指針となる骨密度検査は、各自治体の検診の一環でおこなわれている。だが、実施時期や対象年齢、費用などはまちまちなので、各自治体への問い合わせが必要だ。

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