小田急の施策は京王の最混雑区間に大きく影響を与えているのは数字からも明らかで、相模原線京王多摩川~調布の混雑率と輸送人員は2017年度130%(21,534人)だったのが、2018年度は124%(20,835人)に減少。京王線下高井戸~明大前は2017年度167%(63,023人)だったのが、2018年度は165%(62,428人)と減少しており、通勤・通学客の流出が表れている。
■直通する「京王ライナー」と快適な「ロマンスカー」
京王は小田急の複々線完成に先手を打つ形で、2018年2月22日にダイヤ改正を行い、座席指定列車「京王ライナー」がデビュー。新宿~京王多摩センターを最速24分で結ぶ。座席指定券410円を足しても740円と割高感がなく、好評を博している。
一方、小田急は多摩線直通の特急ロマンスカーが設定されていない。その分、平日下りの18時以降、新百合ヶ丘に停車する列車を多摩線ホームに充てることで、同一ホームで各駅停車に乗り換えられる。新宿~新百合ヶ丘の特急料金は420円で、リクライニングシートに身をゆだねることができる。運がよければ新百合ヶ丘で乗り換える各駅停車でも、“着席帰宅”ができよう。
新宿18時12分発から21時18分発までの江ノ島線直通快速急行および急行も同様の施策を行っており、多摩線沿線に住民にとっては“わかりやすい乗り継ぎ”といえる。「京王ライナー」に比べると、時間はかかるものの、多摩線直通の快速急行設定も含め、乗客の負担を最小限に抑える工夫をしている。
■新たな路線の開業で、利便性はさらに高まる!?
京王にとって静かに待ち望んでいるのは、JR東海が建設を進めているリニア中央新幹線の開業だろう(2027年開業予定)。相模原線の終点・橋本に駅が設置されることで、新宿~名古屋は山手線で品川に出るJR線経由のルートよりも早いことが考えられる。開業の暁には、中央新幹線最速列車と「京王ライナー」のリレーにより、快適性の高い移動に期待したいものだ。
小田急側にとっても、横浜市営地下鉄ブルーラインのあざみ野~新百合ヶ丘の延伸開業が待ち遠しいだろう。多摩センター~横浜は橋本で京王とJR東日本横浜線の乗り継ぎが有利な状況だが、予定通り2030年に開業すると、新横浜、横浜方面の近道になるものと考えられる。
さらにブルーライン沿線の港北ニュータウンから、多摩線、多摩都市モノレールの乗り継ぎで立川方面への最短ルートも形成され、交通ネットワークが充実するはずだ。(文・岸田法眼)
岸田法眼(きしだ・ほうがん)/『Yahoo! セカンドライフ』(ヤフー刊)の選抜サポーターに抜擢され、2007年にライターデビュー。以降、フリーのレイルウェイ・ライターとして、『鉄道まるわかり』シリーズ(天夢人刊)、『論座』(朝日新聞社刊)、『bizSPA! フレッシュ』(扶桑社刊)などに執筆。著書に『波瀾万丈の車両』(アルファベータブックス刊)がある。また、好角家でもある。引き続き旅や鉄道などを中心に著作を続ける。