こうしたマスクによる肌トラブルは、「接触性皮膚炎」と「にきび(ざ瘡)」が多くを占めています。「接触性皮膚炎」とはいわゆる「かぶれ」のことで、マスクが肌にあたり刺激となることで、炎症を起こしてしまうものです。肌の赤みやかゆみ、痛みを伴います。マスクのストラップのあたる耳の後ろの部分がかぶれてしまう方も、今年の夏は多いようです。

「にきび」は、毛穴に皮脂が詰まってふさがることで、アクネ菌と呼ばれる常在菌が過剰に増え、アクネ菌が皮脂を分解して皮膚に刺激を与える物質を作りだす結果として炎症が生じ、皮膚が隆起してくるものです。マスク内の温度と湿度が上がることにより、皮脂の分泌が増えるため、今年の夏は特に「にきび」に悩まされる方も多くなっています。

 日本のように、新型コロナウイルス対策としてのマスク着用は義務ではなく任意としている国がある一方で、ニューヨーク州やワシントン州などアメリカでは公共の場でのマスクの着用を義務化が広がっています。フランスやイタリアなど欧州では、早い段階からマスクの着用を義務化している国もあります。

 実際に、義務化による効果を示唆する論文も発表されています。アメリカのテキサスA&M大学のRenyi氏らは、イタリアでは4月6日に、ニューヨーク市でも4月17日に公共の場でのマスク着用が義務化された結果、イタリアでは4月6日から5月9日までに78,000人以上、ニューヨーク市では4月17日から5月9日までに66,000人以上の感染者数が大幅に減少したことから、公共の場でのマスクの着用がヒト同士の感染を防ぐための最も効果的な手段である、と主張しています。

 つい先日、世界保健機関(WHO)は、18歳未満の子どものマスク着用に関する指針を発表しました。その指針によると、5歳以下の子どもはマスク着用を義務づけるべきではない、6~11歳については、地域での感染の広がりや、重症化するリスクが高い高齢者と同居しているかなどを考慮してマスク着用するかどうかを判断する、12歳以上の子供は大人と同じ条件でマスクを着用し、特に、他の人との距離が1メートル以上確保できない場合や、その地域で感染が広がっている場合には、マスクを着用すべきである、と助言しています。

次のページ
医療用マスクと布製マスクの使い分けについても指摘