日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「マスクの重要性」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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8月半ばを過ぎても全国各地で猛暑日を記録。最高気温が40度を観測した地点もあるほどの暑さとなっており、気象庁と環境省が連日、熱中症警戒アラートを発表しています。
炎天下の中マスクを着用している今年の夏は、肌荒れに悩まされているという方も多いのではないでしょうか?
先日、定期的に内科を受診されている方が、マスクではなくハンカチで目から下の部分を覆って診察室に入ってこられました。どうしたのですか、と尋ねたところ、「新型コロナウイルス感染が流行し始めてからずっとマスクをしていたら、梅雨頃からマスクで覆っている部分が真っ赤になってしまい、痛くてマスクをつけられなくなってしまった……」とおっしゃるではありませんか。
マスクで覆う目から下の部分は真っ赤に腫れてしまい、炎症が起きてしまっているのが一目瞭然でした。皮膚科にはすでに受診されていて、「接触性皮膚炎」と診断されたとのことでした。
私も、診療時や通勤中を含め、ほぼ一日中マスクを着用しているせいか、お盆明けごろから、マスクが触れるあたりの肌荒れが次第にひどくなりました。気がついたら、顎のあたりには汗疹(あせも)ができてしまいました。
医療用マスク(サージカルマスク)は鼻の形に沿って着用するため密着度が高く、使い捨てのため、感染予防の観点からは優れています。その一方で、サージカルマスクの内側は不織布が使われており、手触りはガサガサしているため、擦れることによる肌への刺激も大きいです。
結果として、真夏の外をほんの少し歩くだけで、マスクの中は熱気でこもり蒸れてしまい、また肌と触れている部分は擦れが生じて、肌トラブルが起きやすい環境であると言わざるを得ないのです。