誰も信じないかもしれないが、この国に生きるどの一人をとっても、このような体制にあってはいつでも犠牲者になり得るのである。生存できるか否かは幸運かどうかにかかっている。誰も信じないかもしれないが。

 中国人は忘れっぽい。私が注意を促すまでもなく、中国人なら誰でも知っていることだ。ネット上では早々と李文亮医師の記念碑を建てようと呼びかける人がいるけれども、断言してもいい、碑の建立はあり得ない。

 呼びかけるだけなら少しの善意と勇気があればいい。この点ではおおよその中国人は地球上の他の人々と変わりなく善意と勇気を持ち合わせている。しかし記念碑を建てるとなると必要になってくるのは決してあきらめない、決して妥協しない精神と行動だが、こちらは、私自身を含め私たちの多くが持ち合わせていないものだ。私たちは待つことに慣れ、そして次第に忘れる。

■スクリーンショットの中身

 一方、体制は一時たりとも行動を停止しない。見てほしい、私が目にしたスクリーンショットがある。

「武漢市中心病院の李文亮医師が死亡した件は、厳格な規範に基づく原稿のソースが求められる。自社原稿を用いて独断的に報道することは厳禁。ニュースのプッシュは不可。評論不可。煽り不可。双方向的部分については穏当で控えめな温度とし、トピックを立てることは不可。徐々にホット検索ワードから取り除き、有害な情報は厳しく管理する」

 これは間違いなく微博(ウェイボー)のたぐいのメディアプラットフォームの内部規定だろう。この種の規定を設けることで、彼らの目標は必然的に達成できることになる。私はいささかの疑いも差し挟まない。

 つゆほどの疑念も持たぬこと、黙認することはなんと恐ろしいことか!

 新型コロナウイルスはすでにこれほど多くの人を殺し、その中には「内部告発者」李医師も含まれる。このウイルスの広がりと同時にもう一つの無形のウイルスが依然として自由自在に蔓延している。私たち一人ひとりはそのウイルスと共存しているが、この種のウイルスの恐ろしさについてはまったく意識していない。一つの急性伝染病はいまだ終息せず、もう一つのウイルスはまさにいま醸成されつつあり、いつ爆発するか誰も分からない。

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