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今回は、クリエイターとしての記事を書きます。YouTuberは演者のイメージが強いのですが、動画の制作はクリエイターとしての要素が多く求められます。そのため、YouTuberに必要なのは、編集技術や動画の知識よりも斬新な作品を生み出す企画力や魅力的な動画を制作するための価値観、クリエイティブさだと思います。YouTubeを見ているだけでは培えない哲学とも呼べる要素です。動画には、作り手の人生観や価値観が多く反映されます。
YouTubeの動画に限らず、音楽やアニメや映画や小説など、さまざまな分野でヒットする作品には哲学があります。作り手の人生観や恋愛観、仕事観や価値観などの哲学に、受け手が感動したり感化されることによりコンテンツがヒットします。
この視点で往年や最近のヒットした作品をみると、コンテンツの核には哲学があることがわかります。分かりやすい例として漫画「鬼滅の刃」を挙げます。この漫画がヒットした要素は、女性にも人気があったことや、ストーリーの分かりやすさ、技の華やかさなどもあります。しかし、物語の根本に哲学があった点も強かったと思います。
鬼滅の刃における哲学の一つは、「人生には理不尽なことが起こる」ことです。物語の冒頭で、主人公は理由もなく家族を殺されます。この理不尽さは、実は自然災害に見舞われることが多い日本人にとって、潜在意識に刻み込まれた共通認識とも言えます。そして主人公たちは理不尽さに屈することなく戦います。日本人は、どんな災害に見舞われても、必ず復興を遂げてきた民族です。「理不尽に負けずに乗り越える展開」に共感しやすいのです。この展開は、進撃の巨人や半沢直樹などのヒット作にも見られます。
鬼滅の刃は、理不尽さの象徴である鬼たちも、実は理不尽さの犠牲者であるという構図も絶妙です。勧善懲悪というわけではないのです。鬼たちの中に垣間見える「人間の心の弱さ」は、家族への思いや寂しさや孤独など、読者の共感を呼びやすいテーマでもあります。鬼という存在も人間らしさの一部であり、共感する余地があります。
哲学が根本にあるため、現実離れしたストーリーでも読者は物語に深く入ることができ、夢中になります。潜在意識で共感したり共鳴したりする部分がある作品だからこそヒットしたのでしょう。これは子供向けの作品であっても同じです。アンパンマンがおなかを空かせている子供に自分の頭をあげるという設定には、やなせたかしさんの戦争体験で味わった飢餓の苦しみや、正義には献身が伴うという哲学が盛り込まれています。