智弁和歌山の小林樹斗 (撮影/写真部・東川哲也)
智弁和歌山の小林樹斗 (撮影/写真部・東川哲也)
明石商の中森俊介 (撮影/写真部・東川哲也)
明石商の中森俊介 (撮影/写真部・東川哲也)
中京大中京の高橋宏斗 (撮影/写真部・松永卓也)
中京大中京の高橋宏斗 (撮影/写真部・松永卓也)

 コロナ禍の影響で中止になった夏の選手権大会に代わり、1校1試合ずつという異例の形式で行われた2020年甲子園高校野球交流試合が8月17日、全日程を終えた。投打の注目選手たちは実力を発揮できたのか。今後、プロでも活躍する選手は。高校野球の“目利き”たちに聞いた。

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 粒ぞろいと言われた今年の投手陣の中でも、特に鮮烈な印象を残したのは中京大中京(愛知)のエース・高橋宏斗だ。

「圧巻の投球を見せてくれました。素質は松坂大輔に匹敵すると思います」

 横浜高校野球部元監督の渡辺元智氏は、かつての教え子を例にとってこう絶賛した。

 智弁学園(奈良)戦に先発した高橋は150キロ台の直球を連発し、終盤の九回に最速の153キロを計測した。直球、変化球ともに外角のきわどいところに決め、11奪三振。底知れない潜在能力を感じさせた。渡辺氏はこう続ける。

「フォロースルー後に体が左に流れるのは松坂と似ています。これは腕の振り、つまり上半身の力が強すぎて、下半身との関係がアンバランスだから。下半身に強さと柔らかさが備われば、制球力も含め、もっと伸びるでしょうね」

 ただ、素質は最上級でも、現時点での実力では「高校時代の松坂のほうがちょっと上」とも言う。

「制球については松坂も決して良いほうではなかったが、スライダーの切れは松坂のほうが上でしょう。それに高橋君はフィールディングにもまだ甘いところがある」

 高橋と並んで前評判が高かったのは、明石商(兵庫)のエース・中森俊介。桐生第一(群馬)を相手に2失点完投と好投したが、物足りなさが残ったという声もある。全国各地のアマチュア選手の取材を続ける「流しのブルペンキャッチャー」こと、スポーツライターの安倍昌彦氏はこう話す。

「カウントで追い込んでから打者をのみ込む凄みがあるかが名投手の条件。かつての田中将大大谷翔平にはそれがあった。中京大中京の高橋君には牙が生えてくるような怖さを感じたが、中森君は用心深すぎるのか牙は見えなかった。大崩れはしないが突き抜けない印象。追い込むまでは超一流だけにもったいない」

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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