B:経営陣を前に大口案件の審査会のようなものはある。何週間もかけての準備は大変だが、説明は1案件で5~10分。いくつか質問され、答えきれなかったら案件は流れる。だから、ドラマの半沢のように、長々とプレゼンし、ましてや土下座させるなんてあり得ない。

C:土下座はないけれど怒られることはある。某会社への出資をめぐる審査で、出資しないのが妥当な判断とされたが、他行が出資を決めると担当者が叱られた。トップが「なんでうちはやらなかったのか!」って。

D:銀行は“減点主義”。ミスして罰点をくらうと、復活はなかなかできません。だからできるだけ用心しながら仕事をします。トラブルが起きた時、自分に責任がないことを証明できるよう、仕事の役割分担は明確にします。トラブルになりそうな仕事は極力引き受けず、他人にいくように仕向けますし、あらぬうわさを広めて、落とし穴を掘って同期や上司をはめるなど日常茶飯事ですよ。

C:銀行の世界で“やられる”のはよくある。銀行は人事でしか人を掌握できない。人事異動も頻繁で、“飛ばす”“飛ばされる”ことも多い。

D:銀行は“評判人事”と言われる。社内的な評判をベースに人事部が評価するが、職位が上がるほどこれが強くなる。出世争いをしている同期や、人事評価を逆恨みした部下から、ありもしないうわさを立てられて飛ばされた銀行員も結構いる。

 例えば、客と頻繁にゴルフに行って「癒着だ」とチクられて、関連会社に飛ばされた支店長がいた。彼はチクられたことを後で聞き及び、親しい役員に猛烈にアピールして人事に掛け合ってもらい、銀行支店長にめでたく復活しました。これはまれな例。ほとんどは飛ばされたまま銀行員人生を終え、関連会社や取引先に出向させられておしまいです。

A:うちの大事な海外現地法人トップの交代時期が近づき、人事担当者が頭取に複数の候補者を示したところ、頭取は一人を指さして「コイツ以外は知らない」と言ったそうです。就任したのは指をさされた人。能力や経験などとは無関係に人事が決まることは多い。

C:ある支店で女性行員が上司にまともな意見を言ったところ、翌日に飛ばされたことがあった。本社の中枢ポストから来た支店長のいる支店であれば、ありうる話。

>>後編【「半沢直樹」のウソ・ホント 銀行員が語る“ドラマよりひどい現実”も】へ続く

(本誌・池田正史、浅井秀樹、宮崎健)

週刊朝日  2020年9月11日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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