市村:そうそう、いつも妻がお世話になっております(笑い)。そうやって共演はなくても、出会いから30年くらいずっと意識はしてきたわけですよ。で、この作品では役所さん演じる島田新左衛門と、敵対する僕の鬼頭半兵衛はかつての同門だったという設定で。僕のなかでは役所さんと僕、そして2人の役柄の4人格がオーバーラップするような不思議な体験でした。
《物語は江戸時代末期。罪なき民衆に殺戮を繰り返す暴君・松平斉韶(稲垣吾郎)を暗殺すべく、御目付役・島田新左衛門(役所広司)は13人の刺客を集める。敵対するのは、かつて新左衛門と同門であり、いまは斉韶の腹心となった鬼頭半兵衛(市村正親)。二人はそれぞれの大義をかけて、決死の攻防を繰り広げる......。》
市村:僕はそんなに映画をやるわけじゃないし、まして時代劇は初めてでしょう。役所さんに「やっぱりミュージカル上がりは腰が低くなくてダメだなぁ」なんて思われたくないんで、腰入れのために刀の素振りを家で100回やったりして。
役所:そうだったんですか。
市村:クランクインして最初に役所さんと乗馬クラブでお会いしたんですよね。役所さんがまず「(馬から)落ちました?」って聞くから「いや、落ちてない」(きっぱり)。
役所:僕なんて初めのころゴロゴロ落ちましたからね。市村さん、やはりダンスとかなさるから、バランス感覚がものすごくいい。
市村:落ちそうになると役所さんの顔がフッと頭をよぎってね。「絶対、落ちてなるものか!」って(笑い)。役所さんは時代劇、けっこう出られてるけど。
役所:いや、映画はこれが2本目ですよ。
市村:意外だなあ。
役所:市川崑さんの「どら平太」(2000年)と本作。今年はたまたま「最後の忠臣蔵」(12月18日公開)と続きますが。
市村:じゃあこんなに殺陣のあるのは初めて?
役所:そうですね。テレビはチャンバラがつきもので多少はやりましたけどね。
--殺陣シーンも含め、撮影はかなりハードだったのでは?
役所:三池監督が撮ると聞いたときから「まあ生っちょろいものは撮らないだろう」と想像してましたからね。数ある時代劇のなかでも「どうだ、これでもくらってみ!」という潔さがあると思いますね。
市村:演じるわれわれも、生傷が絶えないくらいで。