「僕の解釈で話させてもらうと、映画化するにあたって、樋口真嗣監督は普遍性を感じてほしかったんじゃないかとなと思ったんです。つまり、エレンは孤独で、漠然と現状に納得がいかずにもがいているんだけど、大きな目標や、自分が打ち込めるものが見つかっていない。だから仕事も辞めてしまうし、何かに当たる……。これって、誰もが経験をしたことがありますよね。(中略)だから、自分に近い視点で見てもらえると思うんです」(AERA 2015年8月3日号/25歳)
「だれでも今の環境から逃げたいって思ったことがあるんじゃないかな。過去の経験になぞらえて観ていただいたら、また違う楽しみ方があると思います」(ESSE 2015年8月号/25歳)
三浦さんの作品に対する姿勢と、役作りへの努力、そして役柄への共感は、繊細な演技が必要とされる難しい役どころでも生きた。ドラマ「僕のいた時間」では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症する大学生の役を演じた。
「死が迫りくるとき、人はどういう感情を抱き、どういう希望を見出すのか。みんなの意見も受け入れながら、自分でとことん考え抜きたい。そして少しずつ変化してゆく気持ちをていねいに演じていきたいですね」(25ans 2014年3月号/23歳)
振り返れば、ドラァククイーンを演じたミュージカル「キンキーブーツ」(2016年4月/26歳)、ドストエフスキーの小説を舞台化した「罪と罰」(2019年1月/28歳)、ドラマ「太陽の子」(2020年8月/30歳)など複雑な境遇に置かれた人物を好演してきた。どれもそれなりの準備が必要だろう。
こうしたドラマや舞台の準備に加え、語学の学習も続け、短期間だがイギリスに語学留学も果たしたというから、驚きだ。
「怠け者の部類に入るほうなので、そうやって時間を埋めておかないと駄目なんです」(週刊文春2018年12月13日号/28歳)
インタビューを読む限り、与えられた仕事に真摯に取り組んできたことは確か。ただ、その俳優人生の核となったものは、ギラギラした野心というよりは、いい演技、理想の演技の追求だったように思える。
順風満帆にみえた三浦さんの俳優人生。三浦さん自身は30歳の節目をどのようにとらえていたのだろうか。立ち止まる時間はあったのだろうか。次回は、友人をテーマに振り返る。(AERAdot.編集部)
※このシリーズの他の回はこちらから
【2回目】三浦春馬さんの死から心に穴が開いたままの人へ 残したい「本人の言葉」~人との出会い~
https://dot.asahi.com/dot/2020092200004.html
【3回目】三浦春馬さんのいた時間を忘れたくない人へ 大切にしたい「本人の言葉」を集めて ~30歳の節目~
https://dot.asahi.com/dot/2020092800043.html
【4回目】三浦春馬さんの死から時が止まってしまった人へ 結婚と恋愛をめぐる「本人の言葉」https://dot.asahi.com/dot/2020100300016.html
【5回目】三浦春馬さんの死でつらい思いを抱える人へ 「14歳の母」から「せかほし」まで本人の言葉https://dot.asahi.com/dot/2020100600064.html
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