70代や80代の人にも挑戦してほしいと、エールを送る。
「はじめは、お料理の写真などをアップするのもいいですよ。高齢でひとり暮らしだと作るのも面倒になりますが、インスタにアップする、と思うと嫌でも作らざるを得ません」
LINEに挑戦する高齢者も少なくない。岡山県在住の岡佐智子さん(90)もそのひとりだ。
シニア向けスマホを昨年末に買ったが、使うのは通話だけだった。そこにコロナが襲って関東に住む娘一家やひ孫たちと会えなくなり、電話でのやりとりだけになった。
5月ごろ、佐智子さんはLINEでビデオ通話を試みた。長女の玲子さんが、LINEのアプリをスマホにダウンロードしてくれていたのだ。
「何カ月かぶりに母の顔を見ることができて、涙が出ました」
そう語る玲子さんは、家族の動画や写真を送り、メッセージのやりとりも始めた。
佐智子さんは言う。
「間違ってカメラを押したり、失敗もあります。でも、近所に住む長男のお嫁さんや行きつけの美容院など、みんなが『今日はスマホのどこを聞きたいの?』って教えてくれるんです」
東京に住む孫も、ひ孫3兄弟の写真を送ってくれる。
「『かわいいね。これから出かけるね』とメッセージを送ると、『だいじょうぶ?』との返事がきました」
と佐智子さんは笑う。
こうしたやりとりを家族とするために、コロナ禍でSNSやパソコンに挑戦するシニアの人たちが増えている。
全国約200カ所でパソコン教室を展開する「わかるとできる」の広報担当者によれば、政府の緊急事態宣言が解除された後の7月から9月上旬までの入会者数は、前年同期と比べて大幅に増えた。特に60歳以上の人たちが、スマホやテレビ会議システム「Zoom」(ズーム)で「友達や家族と話したい」と意欲をみせている。
積極的に外に出て、ひとり時間を活力に変える人もいる。
宮内庁長官を長年務めた羽毛田信吾さん(78)は、コロナ禍で畑仕事にいそしんだ。政府の緊急事態宣言下で、館長を務める昭和館(東京都千代田区)や理事長を務める団体での勤務も少しばかり減った。自宅から徒歩10分の畑では、キュウリやスイカが取れた。知り合いへのおすそわけで、会話も生まれた。