新型コロナウイルスの感染を避けるため、自宅にこもり続けるシニアは少なくない。そんな中、82歳のインスタグラマーや90歳のLINEユーザーなど、「ひとり時間」を楽しむ人もいる。
82歳のファッショニスタが選ぶのは、鮮やかな赤い口紅。真っ白なシルバーヘアに映えて美しい。デミタスカップを右手にカフェで粋なポーズを取るのは、インスタグラマーとして有名な木村眞由美さんだ。神戸市のセレクトショップ「hananoki」の経営者でもある。
日々、インスタグラムにファッショナブルな装いの自分の写真を投稿する。フォロワー数は7万1千人強。昨年秋には、自分がモデルを務めるファッション本を出版した。コロナ禍でも毎日、健康のために店に顔を出している。
「チェリーピンクや赤、黄色など、きれいな色の服を選んで憂うつな空気を吹き飛ばすようにしています。コロナ禍ではマスクでイヤリングなど耳のアクセサリーができませんから、指輪を二つ三つ重ねたり、大ぶりのペンダントで遊び心を出してます」
インスタを始めたきっかけは、夫に先立たれた喪失感。「ぽっかりと心に穴が開いた」というひとりの生活で、買い物もできなくなった。ご飯を作るのも食べるのも嫌になってやせた。
心配した2人の息子が提案した。
「お母さん、インスタをやってみないか。仲間が増えるよ」
スマホの操作すらろくにわからなかった。インスタなども知らなかった。それでも挑戦しようと思ったのは、息子たちがこうアドバイスしてくれたからだ。
「得意のファッションを掲載しては」
店の40代のスタッフも応援したいと撮影役を買って出てくれた。
もちろん、インスタへの写真の投稿やメッセージの打ち込みは、自分でやっている。
「はじめて写真をアップしたのは5年前。『いいね!』は二つでしたよ。それが10になり、いまでは7万のフォロワーがつきました。ひとり暮らしの自宅に帰ると、インスタに『おかえりー』なんてメッセージが届いたりするので、コロナで会えなくてもお友達や仲間とつながっている喜びがあります」