出口:絶対そうです。「うちの学生は、入試のときがいちばん学力が高いんだ」とかいう大学の学長もいるようですが、変ですよね。「大学が存在する意味はどこにあるんですか? 学力が落ちていくんだったら、4年間何を教えているんですか?」ということですよね。

林:あるテレビ局の社長が、採用面接できのう何を食べたかを聞いたら、ある学生が「私は松屋の牛丼を食べました。吉野家のほうが高いんで」と答えたそうで、「すごくしっかりした子だった」というんです。そんなことで感動するぐらいだったら……。

出口:「この1週間、どんな本を読みましたか」って聞いてほしいですよね。絶対そう思います。若者が本を読まないのは大人が悪いと思うんです。本を読むようなインセンティブ(動機づけ)を大人がつくれないからですよね。

林:APUの学生さん、本はお好きなんですか。

出口:留学生はめちゃ読みます。

林:日本人はどうですか。

出口:つられて読むようになります。寮で生活していると、ルームメートが必死に読んでいるのを見てつられるんですよ。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

出口治明(でぐち・はるあき)/1948年、三重県生まれ。京都大学卒業後、72年日本生命入社。金融制度改革や保険業法の改正に尽力。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、2006年に退社。08年に「ライフネット生命」を開業。12年上場。10年間、社長、会長を務める。18年1月から現職。歴史に造詣が深く、「メシ・風呂・寝る」から「人・本・旅」への転換を提唱。リーダー論、ビジネス論、歴史などについての著書多数。近著に『還暦からの底力』(講談社)、『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』(KADOKAWA)、『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)など

週刊朝日  2020年9月25日号より抜粋

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