9月16日に発足した菅内閣は、菅義偉首相を除く20人の閣僚のうち初入閣は5人、再任は8人、横滑りは3人。「安倍政権を継承する」という菅氏の意思が見事なまでに体現された。今回の抜擢(ばってき)は新政権にどう影響するのか。AERA 2020年9月28日号の記事を紹介する。
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組閣および党内人事の過程で、菅首相が真っ先に決断したのが、無派閥で世襲議員ではない自分を総理総裁に担いだ麻生太郎・財務大臣と、二階幹事長の続投だった。実質的にこの2人が政権の最高権力者であり、首相となった菅氏といえども、絶対に逆らうのは難しいと、自民党のベテラン議員はみる。
「派閥均衡とはいえ、安倍晋三・前首相の出身派閥である細田派、そして麻生派、二階派の3派閥に所属する議員の入閣が手厚くなっている。二階さんにしてみれば、党と官邸がほぼ互角の関係で均衡を保つことで、安定的、永続的な自民党政治が期待できるという意味では、満点の人事だと思っているはずです」
無派閥と言われる菅首相だが、実際には若手を中心とした25人程度の側近議員によるグループを形成。首相の選挙区がある神奈川県選出の議員が多く、菅首相誕生に最も期待を寄せていた面々だ。その中の一人は、組閣の際には若手を登用してほしいと重ねて談判してきたと語る。
「例えば、三原じゅん子氏などは、知名度もある上、安倍政権でも首相に尽くした。選挙の顔にもなる。けれども結局、派閥の論理が優先された。安倍氏の実弟が防衛大臣というのもあからさますぎる。これが自民党だと言われれば、ひれ伏すしかないが、大臣や党幹部の平均年齢があまりにも高すぎる。しかし、党内に二階、麻生の両氏に気兼ねなく意見を言える若手など一人もいない」
■維新の会から抜擢の案
地味ながら、実は注目されていたポストがあった。菅氏の数少ない独自政策の「携帯電話料金の引き下げ」を管轄する総務大臣のポストだ。結局、二階派の武田良太氏が選出されたが、直前まで総務大臣には、菅氏と太いパイプを持ち、協力関係にある日本維新の会のメンバーがサプライズで抜擢されるという案がまことしやかに囁かれていた。自民党の大臣経験者の一人は、菅首相と日本維新の会の松井一郎代表との間に安倍政権時代から太いパイプがあることは、党内では周知の事実だと話す。