プロレスにおいて拳攻撃は反則だが、平手打ちはルール内。俗に言う『ビンタ』は、『張り手』などと呼ばれる。最初に思い浮かぶのは、拳同様にアントニオ猪木だ。

 試合中はもちろん、素人相手にも気合いを入れるサービス『闘魂注入ビンタ』で使用する。これは当時国会議員(90年)だった猪木が受験を控えた予備校生に腹部へパンチさせたところ、急所気味に入った。キレ気味の猪木が反射的に『張り手』を出してしまったのが始まり、とも言われている。

 蝶野正洋は、どちらかと言えばテレビの印象が強くなった。年末恒例、日本テレビ系『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(絶対に笑ってはいけないシリーズ)の、月亭方正(山崎邦正)にビンタをするイメージが世間にも刺さっている。

「若い子らの間では、『ビンタの蝶野』のイメージなので、それを売名に使っていきたい」と防災・救命の啓発活動も行っているほどだ。

『張り手』1つで、試合中に強烈な説得力をみせるのが鈴木みのる。

「誰もが使う技だけで明らかに他のプロレスラーと違う姿がみせられる。形だけで必殺技なんて作るもんじゃねーよ」(鈴木・NJPW公式サイト)

 基本と言われる技でも使い方で個性が出せる。『張り手』1つで試合の流れ、場内の雰囲気、勝敗の行方すら左右してしまう。

『張り手』同様、手の平の手首寄り部分で相手を叩くのものが、骨法の技でもある『掌底』。鈴木の『張り手』も、形によってはそう呼ばれることもある。

『掌底』を使用するレスラーは多いが、獣神サンダー・ライガーほど印象的な使い手はいない。相手のアゴを下から突き上げるように射抜く通常形の他、試合展開によって様々なものを使う。一見すると単純に見える打撃であるが、それを多種多様に使用できたのがライガーのプロレス頭脳の良さゆえだ。

 強烈さでトップクラスなのは、ビッグバン・ベイダーの『ベイダー・ハンマー』。オープン・ハンド・ブローと呼ばれ、手の平を開いた状態で相手の首などを殴りつける。元NFL選手で190cm200kgとも言われた巨体を生かし、「相手を思い切り殴りたい」とUWFインター時代から使用し始めた。のちに森嶋猛(ノア)が、同様の技を『モリシ・ハンマー』として使用した。

暮らしとモノ班 for promotion
「昭和レトロ」に続いて熱視線!「平成レトロ」ってなに?「昭和レトロ」との違いは?
次のページ
チョップの名手といえば?