男性のがん患者数の第4位を占める前立腺がん。早期にはほとんど症状がないが、血液検査のPSA(前立腺特異抗原)検診で、早期発見が可能だ。最初に選択されることが多い治療法は手術だが、合併症を引き起こすことも多く、ほかの治療法が選択されることもある。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、前立腺がんの監視療法やホルモン療法、抗がん剤治療などについて、専門医に取材した。
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前立腺がんは、PSA検診の普及で、早期に見つかるケースが増えている。
PSAは前立腺から分泌されるたんぱく質で、前立腺内の組織がなんらかの原因で障害されると血液中に漏れ出すため、血液検査でPSAの値が高ければ、がんや炎症などがあると推測できる。基準値は0~4ng/ml。前立腺の状態を反映しやすいマーカーで、がんがある場合、初期でも敏感に数値が上がる。ただ、前立腺肥大症など、ほかの原因でも数値は上がるので、すぐにがんと診断せず、定期的に複数回、数値を見て判断する。
前立腺がんのステージをPSAでいうと、4以上~10未満が低リスク、10以上~20未満が中間リスク、20以上が高リスクとされる。治療に取りかかる前に、PSAが10未満の低リスク群で、がんの悪性度を示す「グリソンスコア」という数値が6以下であれば、超低リスク群として、「監視療法」がおこなわれる。
監視療法は、PSA検査と生検でがんの進行をチェック、治療開始時期を遅らせ、治療による合併症を回避、かつ適切な時期に治療を開始する方法だ。
3~6カ月ごとにPSAの値を調べ、数回分を見て全体的に数値に上昇が見られたら、がんの存在・増殖を疑い、前立腺の組織をとって調べる「生検」をおこなう。生検は前立腺に10~20本の針を瞬間的に刺し、組織をとって、がん細胞の有無をみる。
生検は病院によって異なるが、日本医科大学病院では1泊2日の入院で、30分程度眠っている間におこなわれる。検査後、約5%に出血や発熱、尿の出が悪いなどの症状があらわれるが、数日でおさまるという。同院泌尿器科教授の近藤幸尋医師はこう話す。
「監視療法を続けて数年という人は多く、なかには10年近く経過する人も。油断して中断せずに監視を続けていくなら、超低リスク群にはいい方法だといえるでしょう」