男性ホルモンの影響で増えるがんであることも、前立腺がんの特徴の一つだ。そこで、男性ホルモンの分泌や作用を抑えて、がんの増殖を抑制する「ホルモン療法(内分泌療法)」が実施される。対象は、高リスク群および転移がんだ。

 また、高齢者や、脳梗塞などの病歴があって手術や放射線治療がおこなえない場合も、ホルモン療法が選択される。放射線治療との併用では、中間リスク群にも用いられる。

■男性ホルモンには二つの道筋がある

 男性ホルモンは、大きく、二つの道筋で分泌される。一つは、脳の下垂体から分泌されるLHというホルモンを精巣が受け取って、男性ホルモン(テストステロン)を分泌する道筋。もう一つが、脳の下垂体から分泌されるACTHというホルモンを副腎が受け取って、副腎性男性ホルモンを分泌する道筋だ。精巣からの分泌が90%以上、残りが副腎からで、ホルモン療法は、この道筋をブロック、男性ホルモンの分泌を抑制する(イラスト参照)。

 精巣からの男性ホルモンの分泌を抑えるのは、注射薬だ。LH-RHアゴニスト製剤(商品名リュープリンなど)またはLH-RHアンタゴニスト製剤(商品名ゴナックスなど)で、おなかや肩に、1~6カ月に1回、注射する。

 この注射に、副腎からの男性ホルモンを抑える抗アンドロゲン剤を加え、精巣と副腎、両方からの男性ホルモン分泌を抑える「CAB療法」が広くおこなわれている。抗アンドロゲン剤は1日1回内服で、主にビカルタミド(商品名カソデックス)が用いられている。

 ホルモン療法にも副作用はある。とくに注射薬では、ほてり、発汗、性欲減退、女性化乳房、骨粗しょう症などが起こりうる。骨粗しょう症は骨折などでQOL(生活の質)の低下につながりかねないため、注射や内服薬で予防に努める。

■転移がんの9割は骨への転移

 CAB療法をおこなっても、PSA検査の数値が徐々に上昇し、がんの増殖が疑われる「去勢抵抗性前立腺がん」と呼ばれる状態になると、さらに強力な薬を併用することを考える。14年に保険適用になった、アビラテロンとエンザルタミドに加えて、19年にはアパルタミド、20年にはダロルタミドが承認された。

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