コロナ禍の今年の夏、達郎さんはご自身の番組で、ファン垂涎もののライブ音源を何週もオンエアしてくれた。それだけでも貴重なのに自宅でのアカペラまで披露、音楽でリスナーを励ましてくれた。
そして、必ず「医療関係者の皆さま、教育関係者の皆さま、行政の現場の方々、配達の方々……」と丁寧に語りかけ、同じ局で放送に従事する僕も襟を正すと同時に胸を熱くした。
8月最後の放送で、このとしまえんに触れた達郎さんは、『さよなら夏の日』で番組を締めくくった。
♪波打つ夕立のプール/しぶきを上げて/一番素敵な季節が/もうすぐ終わる/「時が止まればいい」/僕の肩で/つぶやく君 見てた/さよなら夏の日/いつまでも忘れないよ/雨に濡れながら/僕等は大人になって行くよ♪
達郎さんは自分の少年時代や故郷を大切にしている。僕はそれ以降、毎日のようにこの曲を聴いている。
コロナ禍だからこそ、アーティスト・山下達郎と同時代に生きる幸せを感じながら。達郎さん、いつも素敵な放送をありがとうございます。
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
※週刊朝日 2020年10月2日号