監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク/10月2日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/189分(c)2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG/WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
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「善き人のためのソナタ」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督が、今やオークションで数十億の価格がつくことで知られる現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒターの人生をモデルに描く意欲作「ある画家の数奇な運命」。

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 ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母の影響から芸術に親しむ生活を送っていた。しかし精神のバランスを崩した叔母は強制収容の末、安楽死政策によって命を奪われる。終戦後、東ドイツの美術学校に進学したクルト(トム・シリング)は、そこで叔母の面影を持つエリー(パウラ・ベーア)と恋に落ちる。彼女の父親こそが、元ナチ高官で叔母を死に追い込んだ張本人なのだが、そんな残酷な運命に気づかぬまま、二人は結婚する。

 やがて東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへ亡命する。美術学校の教授から作品を否定されながらも、亡き叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じるクルトだったが──。

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
美を愛した叔母の魂を受け継ぎ、共産主義下で命じられるままの絵を描きながら、自分のスタイルを模索する青年。やがて彼が見つける独自のスタイルの絵が、妻の父でナチの大物に衝撃を与える結果を生むのが興味深い。

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
ナチスの退廃芸術展から始まり、画家の創作の苦悩を通して戦後の東西ドイツの歩みが鮮やかに浮かび上がる。モデルとなったリヒターの半生と監督の豊かな想像力や表現力が融合し、その結晶である絵画に心を揺さぶられる。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
3時間以上! でもそのくらいこの人生を語るうえで必要。恋に落ちて、義理の父のとある行動のあとの食卓のシーンで心が締め付けられました。でも人は小さいときに感じたことにまた触れたいもの。ラストの気持ちに共感!

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
考え抜かれた野心作だが、恋愛要素が過剰に感じられるかどうかが評価のポイントになる。撮影と美術の充実ぶりが絢爛で時代を存分に再現。観終えるとドイツ語の原題の「作者ぬきの仕事」が意味することを考えるだろう。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2020年10月2日号