作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。今回は、問題発言を繰り返す衆院議員の杉田水脈氏について。なぜ杉田氏のような女性が出てくるのか、フェミニストの視点で分析している。
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杉田水脈氏の「女性はいくらでも嘘をつけます」の発言は、性暴力被害者支援事業についての自民党内の会議で、韓国の「慰安婦」支援団体に触れた際のものだったという。
本人は言っていないというが、記者の入らない自民党内の会議で、さすがに自民党内でも「これはまずい」と思った出席者がいたのだろう。自民党の複数の関係者からこの発言がメディアに伝えられた。本当に言っていないのなら杉田氏の発言部分だけの録音か議事録を公開すればよいと思う。
いったい“杉田氏みたいな女性”は、なぜうまれるのだろう。「男女平等は反道徳の妄想」と国会で発言し、「慰安婦」問題を矮小化する発言を繰り返し、「女性はいくらでも嘘をつける」と自らをおとしめるような発言を平気でする女性。フェミ的に言えば、女が女を叩けば男に受けるから、の一言である。自民党というすさまじい男社会で生きるための媚びとしての「女嫌い」の戦略で、杉田氏は成功体験を味わってきた。なにしろ地方の市役所職員から国会議員にまでなれたのだから。でもこんな成功体験、もう誰にも踏襲してほしくない。
杉田氏は西宮市役所に勤務していた時代、2度、土井たか子の演説を聴いたことがあるという。1990年代のことだ。マドンナブームを牽引し、最も勢いと影響力のあった政治家・土井たか子の凜とした姿に杉田氏は強い憧れを持ったという。一ファンとして土井たか子に娘を抱いてもらったこともあるほどに。
土井たか子に憧れて、なぜ今そこへ? という強い疑問はわくが、「慰安婦」を叩き、韓国、中国を憎み、女性を軽蔑するような発言をすれば喝采されるような人間関係を杉田氏は生きてきたのだろう。今回、オンラインで、緊急のフラワーデモを行ったとき、杉田氏への怒り、悔しさを表明する人が多いなか、「かわいそうな人」と言った人がいた。その通りだと思いつつ、そんな「かわいそう」な人が国会議員である国に生きている私たちも、かわいそうだ。