二宮和也が実在の写真家に扮した映画「浅田家!」は、家族の絆と写真が持つ力を描いた物語だ。役を通じて考え、感じたのは縁だった。AERA 2020年10月5日号から。
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写真集『浅田家』は、本物の写真家とその家族がレーサーやヒーローなど、さまざまなシチュエーションでコスプレ撮影したユニークな「家族写真」を集めたものだ。そんな写真集を原案に、笑いと涙あふれる家族の物語を映画化した「浅田家!」。自由奔放で人間味あふれる主人公の写真家、政志を二宮和也が演じる。
役を引き寄せたのは、意外な“縁”だった。
二宮和也(以下、二宮):3年前、僕が日本アカデミー賞のプレゼンターを務めさせていただいたとき、最優秀主演女優賞を発表したんですが、そのとき受賞したのが(宮沢)りえさんで、その作品が、今回の「浅田家!」を撮った、中野量太監督の「湯を沸かすほどの熱い愛」だったんです。ところが、僕は作品名を言い間違ってしまったんですよ。というのも、ノミネート作品に「リップヴァンウィンクルの花嫁」という、すごく難しいタイトルがあって、噛まないようにそっちの練習ばかりしていて……まあ、言い訳ですね(笑)。
その後、音声を撮り直して、テレビ放映ではちゃんとした作品名に直してもらったんですけども、本当に監督には申し訳ないことをしたなと思いました。僕自身がずっと名前を間違えられ続けてきた人生ですから、あの何とも言えない寂しい気持ちになるのはわかります。ジャニー(喜多川)さんにもずっと「和也(かずなり)」ではなく、「かずや」と言われてきましたからね(笑)。だから、すぐに中野監督におわびのお手紙を書いたんです。そして「もし何か僕ができることがあればご連絡下さい」と付け足しました。
■家族って面白い
そんなやりとりをしたあと、この作品のオファーが来た。
二宮:お手紙を書いたのは、人間力みたいなものを意識したわけではなくて。僕はいろいろな方と連絡先を交換するようなタイプではないので、単純に連絡先を知らなかったからです。