箱根駅伝は近年ますます、こう言われている。
「山を制する者が大会を制す」
総合力を問われるはずの駅伝で、5区の重要度が飛び抜けて高いのは、その距離の長さとコースの難しさからだ。
箱根駅伝を象徴する山上りのコースで、その高低差は実に864メートル。選手たちは東京スカイツリー(634メートル)よりも高い頂へ上っていく。しかもスタートの小田原とゴールの芦ノ湖では気象まで異なる。負担が大きく、タフな選手だけが勝ち抜ける区間なのだ。
ただでさえきついコースだが、関東学生陸上競技連盟は2006年、世界と戦えるマラソン選手の育成を目的に、この5区の距離を2.5キロ延ばして23.4キロの最長区間とした。
そもそも強いマラソン選手は山上りで育つのか。
スポーツジャーナリストの生島淳さんは批判的だ。
「マラソンは世界的にスピードレースになっています。選手を育てるのなら、5区ではなく2区の距離を延ばしたほうがいい。瀬古利彦さんなども2区出身ですし、山上りで育成しようとするのは現状とそぐわない」
5区で棄権した2大学はどちらも「低体温と脱水症状」が原因だった。日本体育協会公認のスポーツドクターで、日本医師ジョガーズ連盟の中村集医師は、
「冬場のレースでも、実は自分が感じる以上に汗をかいています。水分補給が適切にできないと脱水が血行不良につながり、体を冷やしてしまう。加えて今回は強風でも体温が奪われ、スピードも遅くなり、悪循環に陥って棄権したと考えられます」
と分析している。
※AERA 2013年1月14日号