外来では、「保育園に通う子どものインフルエンザワクチンを早めに接種したかったけれど、10月末まで待たないといけないから不安です」というお母さんの声をすでに耳にしていますし、日本小児科医会は、厚生労働省の通達に対して、乳幼児はインフルエンザ脳症のリスクがあることからハイリスク群であり、優先順位は高いことを挙げ、小児への接種時期を一律に遅らせることは避けるべきであるとの見解を示しています。
小児へのインフルエンザワクチンの有効性については報告があります。例えば、Brendan氏らは、2010年から2014年の米国での358人の小児のインフルエンザに関連した死亡に対するインフルエンザワクチンの有効性は65%であって、インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザ関連の小児の死亡リスクの低下と関連していたことを報告しました。また、マシューフィールドクリニックの臨床研究センターのHuong氏らは、3369人の小児を対象にした調査でも、毎年予防接種を受けた子どもたちは、予防接種を受けていない子どもたちよりもインフルエンザにかかる可能性が低いことがわかったと報告しており、小児へのインフルエンザワクチンの年1回接種の推奨を支持しているのです。
さらに、ボストンのタフツ大学のSteven氏らは2002年から2006年までの米国における約500万件記録や年間の予防接種率データから、子どもへのインフルエンサワクチン接種は、高齢者のインフルエンザに対する集団免疫を誘発する可能性があること、そして高齢者自身にワクチン接種することによってインフルエンザを予防することよりも高齢者にとってより有益である可能性があることを報告しています。
実際、約1,200万人のインフルエンザの感染者数(2018年から2019年のシーズン)のうち、15歳未満は約40%を、60歳以上は約15%を占めており、高齢者と乳幼児や小児に限ると、乳幼児や小児の方が、インフルエンザに罹っている数は多いことがわかります。高齢者の予防接種ももちろん必要ですが、乳幼児や小児の接種時期を遅らせることには疑問が残ります。