日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「今年度のインフルエンザ予防接種」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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今年度のインフルエンザの予防接種が始まりました。今年は、定期接種対象である65歳以上の高齢者を優先し、それ以外の希望者には接種を待ってもらうという方針を厚生労働省が発表していることもあり、まだ開始されたばかりではありますが、ご高齢の方が積極的に接種されている印象です。「今年はじめてインフルエンザの予防接種を受けます」というご高齢の方も多く、初めての方から「インフルエンザワクチン、やはり接種した方がいいのですよね?」と聞かれることも多々あります。やはり、多くの方がインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の同時流行を懸念されていることが伺えます。
アメリカ疾病予防センター(CDC)は、「今年の冬はインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスのどちらもが流行する可能性が高いと考えている。」と言っていますし、実際に、中国武漢の同済病院からは、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時感染が報告されています。今年の冬は、同時流行に警戒し、万全の体制で備えることが必要になることは間違いなさそうです。
とはいえ、日本感染症学会がインフルエンザワクチン接種を強く推奨しているのは、高齢者だけではありません。生後6カ月以上の乳幼児や小児、ハイリスク群の患者、医療者に対しても、インフルエンザワクチン接種を強く推奨しています。高齢者や免疫力の低下している人がインフルエンザに罹患すると肺炎を合併したり、小児では急性脳症を発症したりと、稀に重症化することがあり注意が必要だからです。
にもかかわらず、厚生労働省は、「乳幼児や小児の接種は10月26日以降に接種するように」と接種を遅らせるように通達しました。