正月早々、朝日新聞の報道で発覚した福島第一原発周辺の「手抜き除染」問題。汚染された枯れ葉を川に投棄したり、洗浄に使った水をそのまま垂れ流したり、呆れるばかりの杜撰さだ。ジャーナリストの桐島瞬氏が、現場の驚くべき実態を緊急リポートする。
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道端のあちこちに、合成樹脂製の青い袋が放置されていた。高さ1.2メートルほどある袋の中には汚染土が詰められていた。
朝日新聞(1月4日付)の報道で「手抜き除染」が指摘された福島県田村市。正月明けの6日に現地に赴くと、まだ現場の作業員たちは休みから戻ってきていなかった。
本来、除染作業で出た除去土壌や草などを詰めた袋(フレコンバッグ)は、速やかに仮置き場へ移動しなければならない。だが、ここでは道路脇に置き去りにしたまま、年内の作業を終えたようだ。これも明らかな“手抜き”といえよう。
「こんなに大量の除去土壌が放置されてるとは……」
福島第一原発事故の警戒区域に近い大鷹鳥谷山の電波送信所の正門前に置かれた、30個以上のフレコンバッグを目にしたときのことだ。取材に同行した元除染作業員の伊藤有一さん(52)が、驚きの声を上げた。
線量計をバッグの上にかざしてみた。見る見るうちに数値が上がり、毎時6マイクロシーベルトを超えた。年間換算で52ミリシーベルト。これは、一般人の年間被曝限度である1ミリシーベルトの52倍に当たる。そんなものが、誰でも触れられる場所に放置されている。
「私は線量計も持たされず、ここで2週間も作業をやらされ、しかも川の水も飲んでしまった。線量の高い場所だと教えてくれなかった元請け(鹿島・日立プラントテクノロジー・三井住友建設JV)には、本当に怒りを感じます」(伊藤さん)
※週刊朝日 2013年1月25日号