シャムキャッツ(写真提供:テトラレコーズ)
シャムキャッツ(写真提供:テトラレコーズ)
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ベスト・アルバム『大塚夏目藤村菅原』のジャケット(写真提供:テトラレコーズ)
ベスト・アルバム『大塚夏目藤村菅原』のジャケット(写真提供:テトラレコーズ)

 今年6月に発表されたシャムキャッツの解散発表は、国内音楽のインディー・シーンの一つのディケイドの終わりを象徴していた。幼なじみが結成した東京の4人組シャムキャッツ。2009年のアルバム・デビュー以降、同世代のスカートやceroといったバンドとともに、ポップ・ミュージックに新世代のカジュアルな息吹を吹き込んできた。メロディアスで親しみやすく、かつ高い音楽性を武器に正攻法で活動していたシャムキャッツは、2010年代の日本のインディー・ミュージックを代表する存在だったと言っていい。

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 そんなシャムキャッツがベスト・アルバム『大塚夏目藤村菅原』を10月14日に発売する。予約注文制によるアナログ・レコードのみでのリリースだが、2枚組み全21曲、十数年の彼らの軌跡が堪能できる、バンドからの最後の贈り物だ。

 このベスト盤のタイトル『大塚夏目藤村菅原』は、4人のメンバー、大塚智之(ベース)、夏目知幸(ボーカル、ギター)、藤村頼正(ドラム)、菅原慎一(ギター、ボーカル)の名字を並べたもの。しかも、ステージを客席から見た時の彼らの立ち位置を左から順番に並べているところがなかなか憎い。オーディエンスの立場から見たバンドの姿を何より尊重していることがわかる。実際、シャムキャッツは2007年の結成当初から、人前でのパフォーマンスを積極的に行ってきたライブ・バンドでもあった。

 彼らが登場してきた時は、暴走して止まらなくなったトロッコのようにガタピシと危なっかしいギター・ロック・バンドという印象だった。1990年代のアメリカのオルタナ系バンドの影響を受けた、粗削りでやんちゃで、でも、どうしようもなく人懐こい雰囲気のある愛すべき連中……と。それが活動を続けるにつれ、よりメロディーに寄り添うような曲作りへと発展し、時にはダンサブルでグルーブ感ある演奏で踊らせるようになった。転換点は2014年に発表されたサード・アルバム『AFTER HOURS』あたりだろう。初期のドタバタした演奏はかなり後退し、歌と旋律を美しいギター・リフやフレーズとともに丁寧に聴かせるようになった彼らは、インディー・ロックというフィールドを越え、広く多くのリスナーに訴えかけることができる存在となっていた。メンバーがまだ右も左もわからない10代だった頃に結成されたバンドが、広く人気を獲得しながら責任感や使命感なども意識し、次第に音楽性も深めて成長していく様子を見ているかのようだった。

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