おなかを痛めて生んだ子ではないと愛情が生まれない、なんてことが昔は本気で言われていました(近年はだいぶ減ってきたと思いますが)。もしそうならば、無痛分娩が多い欧米人や、出産で痛みを感じない男の人は、赤ちゃんに愛情を持てないことになります。痛みに耐えること、苦労すること、がまんすることが美徳という日本人特有の価値観は、親の親世代が「自分の頃はそうだった」という理由で語るだけなら、もはや単なる時代遅れの押しつけになり得るものです。


  
 加藤紗里さんの「離乳食つくるわけない」「そんなに暇じゃない」という言葉は、確かに極端です。「1度もつくったことないの?」という点も疑問ですし、そんなに暇じゃないといわれると、「じゃあどこまで忙しいんだ?」とも思います。

■既製品を利用するかどうかは、家庭によっても違う

 とはいえ、 レトルト離乳食では愛がなくてかわいそうと責める人は、子どもにつくるお弁当に冷凍食品やコンビニおかずは入れたことがないのでしょうか。飲み物もペットボトルなんて決して飲まさずに、急須で茶葉から入れているのでしょうか。「赤ちゃんには自然なものをあげなくてはいけないけれど、ある程度成長したらレトルトでもいい」と考える人は、いったい何歳から線を引き、さらにその根拠はどこからきたものなのでしょうか。

 どの程度の割合で既製品を利用するかなんて、家庭によっても違いますし、時代によっても変わってきます。 「大変さ」が「子どもに愛情をかけていること」とイコールであるという価値観にとりつかれ、思い詰めて育児鬱になってしまうならば、 そんな考え方は親にとっても子供にとっても有害でしかありません。

 日本の政府が、赤ちゃんを生む環境を整えるだけでなく、育てるための環境も整えるように動いてくれれば……子どもを生んだとしても、親が体力的・精神的にそこまで大変だとは思わない社会をつくっていくことができれば、「もう1人子どもを生んでみよう」と考える人たちだって増えるのではないでしょうか。日本の少子化を解決するためのヒントは、そこに埋まっているのではないか?と思うのです。

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