子どもを生むとき助産師さんに、「出産は、1カ月間寝て休まなくてはならないくらいの体力が必要なんだよ」と言われました。しかし母親たちは、子どもを生んだ初日から、慌ただしく赤ちゃんのお世話に追われることとなります。すぐに泣き出す赤ちゃんにミルクをあげ、オムツを替えたりお風呂に入れたり、抱っこしたりもしてあやさなくてはなりません。それはもう、昼夜関係なく時間に駆り立てられて、連続して2時間寝ることさえも難しくなるほど。
私も息子が生まれてからしばらくは、「たまにはお風呂に入るときくらい湯船に浸かってみたい」なんて、今思えば本当にささやかな願望さえかなえられず、がまんすることばかりでした。
あの頃はなんとなく、「自分の時間を作る」 「自分のために何かをする」ことが、どこか悪いことのような気がして、 勝手に罪悪感を覚えていたように思います。「赤ちゃんがいるならば赤ちゃんの世話を最優先するのが当然であり、そうしない親は周囲から白い目で見られるもの」……そんな気持ちが、どこかにありました。
■短時間でもいいから、赤ちゃんとは別の部屋に移る
実際、 0歳の赤ちゃんのお世話は本当に壮絶で、深刻な睡眠不足や疲労、積もったがまんにしんどくなり、子どもにイライラしてしまうことはしょっちゅうあります。私も、心を安定させる対策として教えてもらった、「短時間でもいいから赤ちゃんとは別の部屋に移る」というアドバイスを、何度も実行しました。
産後鬱(うつ)という言葉がありますが、 赤ちゃんが生まれてからしばらくの育児環境は、女性ホルモンに関係なく、誰だって鬱になってしまうほどハードなように思います。情緒不安定になれば、自傷、虐待につながるケースも生まれてきます。
2020年6月5日の厚生労働省による発表によると、19年の出生数は前年より5万3166人少ない 86万5234人で、4年連続で減少しています。合計特殊出生率は1.36でした(ちなみに合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、一人の女性がその年齢別出生率で一生の間に生むとしたときの子どもの数に相当するものです)。
そして子どもを産もうかと考える際に、躊躇(ちゅうちょ)してしまう理由の1位は、経済的な理由なのだそうです。さらにそこから、第1子の子育てで手いっぱいのため、育児ストレスや子育ての大変さが2位、3位に入ってきます。
18年になり、缶からそのまま哺乳瓶に注いで飲ませられるミルクが、日本で発売されるようになりました。こうしたミルクやレトルトの離乳食は、子育ての負担を軽減するために、長年の企業の研究によりつくられたものです。それらを利用することは、果たして罪悪感を覚えるべきもの、周囲から責められるべきことなのでしょうか?