子育てに関わる男性を指す言葉「イクメン」が「新語・流行語大賞」にノミネートされたのは2010年のことだ。あれから10年、女性の労働環境の改善と並行して、社会ではさらなる男性の育児への関わりを求める声が高まっている。
しかし、実態はどうか。厚生労働省の調査によると、19年度の男性の育休取得率は7.48%(7月31日発表の雇用均等基本調査の速報値)。これでも過去最高の取得率だというから驚きだ。対して女性の取得率は83%だった。
仕事と育児の両立に悩む男性は多い。かくいう記者(26)もその一人だ。昨年に長男が誕生したが、仕事を言い訳に育休中の妻に育児負担を押し付ける毎日。このままではいけないと、できるだけ早く帰宅したりもするのだが、すると今度は仕事の質が下がるというジレンマに、モヤモヤとした思いを感じていた。
「仕事も育児も、どちらも30点くらいの感覚ですよね」
そう記者に共感してくれるのは、新書「妻に言えない夫の本音 仕事と子育てをめぐる葛藤の正体」の編集に携わり、自身も4歳の娘の子育て中である朝日新聞の高橋健次郎記者(40)だ。仕事と育児の両立にどう向き合えばよいのか。そもそも記者が仕事と育児を両立することはできるのか。高橋さんに悩みを打ち明けると、記者が抱えるモヤモヤは、女性がこれまで直面してきた困難の「後追い体験」だという実態が浮かび上がった。
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――仕事も家庭もうまくいっていない。そんな「モヤモヤ」とした思いを抱えています。
高橋健次郎(以下、高橋):私も育児をしながら同じような感覚を覚えますので、気持ちはわかります。家事・育児を妻と均等に分担するようになり、仕事にかけられる時間は減りました。すると、仕事の成果物、記者で言うなら記事の量が落ちてしまうわけです。これまでは知見を広げるために本を読んだり、土日にシンポジウムに出たりと自己投資の時間もありました。それができなくなり、「干上がっていく」ような感覚がありました。上司からは「もっと仕事に貪欲になっていい」と言われたりもしました。私自身この仕事が好きですから、「もっと仕事をやりたいのに」というもどかしさはすごくありました。