「金融機関の役割や機能は、単にお金を貸すだけでなく、情報やネットワークなどいろいろな価値を提供できる。顧客が納得できる価値を提供していれば、合併の必要なんてありません。とくに今は企業も個人も新型コロナに苦しむ。合併のために時間やコストをかけている場合ではない。やらなければならないことはたくさんあるはずです」

 金融庁の有識者会議は18年、「1行単独でも不採算な都道府県は23」などと試算し、業界に衝撃を与えた。日銀も、19年4月の金融システムリポートで、10年後には最終赤字になる地銀の割合が当時の1%程度から約6割に増えるとはじき出す。独立路線を貫いても、いばらの道だ。

 前出の大庫さんは話す。

「もう甘えは許されない。あとは経営者の決断しだいだ」

(本誌・池田正史、浅井秀樹)

週刊朝日  2020年11月6日号

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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