

地域経済を象徴する地方銀行が岐路に立っている。「(地銀の数は)多すぎる」と言及した菅義偉氏が首相になり、再編が加速するとみられるためだ。そこで本誌は、これからも効率よく稼ぐ力(コストパフォーマンス)に注目し、全国102行を独自分析。淘汰されそうな地銀をランキング化した。
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「日本全体として、もともと一つの業界に会社数が多すぎる。以前から『オーバーストア(店舗過剰)』と言われてきました。地銀はその最たるもの。ただし、ゼネコンや銀行は統合してもあまり効果が出ない。そのため今まで再編は進んできませんでした」
株式アナリストの鈴木一之さんは振り返る。
都市銀行が合従連衡を重ねて今の姿となったメガバンクとは違い、地銀は身近で相談しやすく、地域の頼れる存在だった。長年、地元の顧客にがっちり支えられてきただけに、再編や統合などは考えられなかった。
「地銀はあるときに突然、赤字になるようなことがなく、業績が悪くなるスピードもゆっくり。かつては保有する株式、今は債券の含み益などもあって、決算にもうまく対応し、大部分は黒字を維持しています。これまでに再編に成功したところは、かなり追い込まれたところ。誰かに背中を押してもらわないと、自分からはなかなか再編に踏み出しにくい」
三井住友DSアセットマネジメントの生永正則さんも、こう解説する。
ところが近年、地銀に対する“外圧”が強まっている。人口減少や少子高齢化で地域経済は衰え、有望な貸出先が減り続けている。日本銀行のマイナス金利政策で、収益の源泉だった預金と貸金の金利差である「利ざや」も縮んでしまった。
地銀の再編は、ここ10年余りでもいくつもあった。それでもなお、全国に100行超ある。同じ都道府県内に複数の地銀があるのはざらで、域内は他の地銀だけでなく、メガバンクや信用金庫、信用組合とも競合し、顧客の奪い合いが激しくなっている。
そこに追い打ちをかけるかのように、新型コロナウイルスの感染拡大が直撃。地域の経済活動をさらに弱め続けている。「再編は一つの選択肢」と明言する菅義偉政権が誕生したのは、そんなときだった。