「統合を協議している事実はありません。(菅氏が進める)地銀再編に関しても、申し上げることは何もない」

 青森銀行の広報担当者はこう説明する。菅氏が9月に「(地銀の数は)多すぎる」などと発言した直後、同行には同じ県内に拠点を置くみちのく銀行との統合話が浮上した。両行はそろって否定したものの、観測はくすぶり続けている。

「現在のビジネスモデルのままでいけるというような状況ではない」。麻生太郎金融担当相は新政権発足後の9月18日にこう述べ、合併などが「選択肢の一つ」だとして菅氏と足並みをそろえた。11月には地銀同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が施行され、再編の“ハードル”はさらに下がる。

「菅首相が再編を口にしたのは、地銀を強くして地方経済の先導役を担ってほしいという思いがあるのだと思います。でも、すべての地方が回復に向かうのは難しい。地方同士の競争は不可避で、それぞれの地方を足場とする地銀同士も競争を余儀なくされます。地銀は業務範囲を広げようにも限りがありますので規模の大きさを求めざるを得ません。とくに第二地銀など、規模が小さなところから合従連衡が進んでいく可能性が高い」

『銀行ゼロ時代』の著者で、金融コンサルティング会社代表の高橋克英さんは指摘する。そのうえで大胆にも、「地銀はいずれ20行くらいのグループに収斂(しゅうれん)していくでしょう」と予測した。

 金融コンサルティング会社ルートエフ代表の大庫直樹さんも、次のように語る。

「やはり規模が小さいほど十分な収益を確保するのは難しい。将来的には、複数の県をまたいだ地方ごとに二つ~三つの広域的な地銀グループ同士が競い合う状態が理想です」

 どの地銀が淘汰されてしまうのか。

『消える地銀 生き残る地銀』の著者であり、外資系の証券会社で銀行業界のアナリストを長く務めた東洋大学の野崎浩成教授のアドバイスをもとに本誌が独自集計した。業務粗利益に対する経費の割合を示す「粗利経費率」で、全国の地銀102行をランキングした。

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