勉強の末、日本の株と債券、海外の株と債券に分散投資をすればリスクが低くなること、信託報酬が安い投資信託を選ぶべきだということがわかった。そこでつみたてNISA約3万3千円、iDeCo2万3千円に通常の投資信託の積み立ても追加し、毎月合計約15万6千円をセミナーで学んだ通りに分散した。

「つみたてNISAの投資信託を選ぶときにこだわりすぎて疲れてしまって。iDeCoは『全部入っているバランス型1本でいいや』と(笑)」

 投資信託8本のうち7本が現状はプラス。10カ月の平均利回り8.5%だ。

「10年後、長男が大学進学の時期から少しずつ解約して、入学金や学費にあてる予定です」

 一方、夫と二人で神奈川県に暮らす女性(62)は17年に約100万円と500万円の投資信託を一括購入した。当時、夫は年収4ケタの会社員。女性は業務用ソフトウェア会社でカスタマーサポートの仕事をしていた。ある日通帳を見ると、そこそこの金額があったので、三井住友銀行の投資信託窓口に予約を入れた。投資といえば中期国債ファンドという、預金に近い投資信託を買ったことがあるぐらいだった。

「銀行の人にすすめられたリスクの低そうな投資信託を約100万円分、買いました。丁寧に説明されましたが、実はよくわからず。投資信託名に『あんしんスイッチ』って書いてあるし長期で持てば大丈夫かなと……」

 この3カ月後、地方で暮らしている母から生前贈与を受けることになった。母がゆうちょ口座から600万円を送金してくれたので、今度は郵便局へ。

「定額貯金がいいか、他の定期貯金がいいかを貯金窓口で聞いてみたんです。そうしたら、別の担当者が2人出てきて、投資信託をすすめられました。貯金より少しだけ増えたらいいなと思い、定額貯金は100万円だけにして500万円でバランス型の投資信託を買いました」

 わずかな期間に投資信託2本、合計600万円の購入となったが、銀行で買った投信はマイナス8.9%、郵便局のほうはプラス3.9%、平均利回りはマイナス2.5%だ。

 生活にも変化があった。夫は定年退職し、カスタマーサポートの仕事は緊急事態宣言後に「自宅待機」となり、その2カ月後に「1カ月分の給料を払うので退職してくれ」と。すぐ生活費に困るわけではないが、これから80歳、90歳と長生きしたら……。そう思うと不安になる。

「3年前は理解せずに買ってしまいましたが、これから勉強して、乗り換えも検討します」

 3月の“コロナ・ショック”から相場は上向きになり、現状は米国株や日本株の投資信託が上昇基調だ。ただし、この好調が未来永劫に続くわけではない。投資信託にリスクはつきもの。勉強し、納得して購入したい。(ジャーナリスト・向井翔太/編集部・中島晶子)

AERA 2020年11月2日号より抜粋

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