「こんがらがったままで それでも何とかして 前に行こうとしてまた転ぶ」――そんな歌詞で始まる、昨年12月に配信された20th Centuryことトニセンの「ツラいチャプター」。東京スカパラダイスオーケストラによるアップテンポの応援ソングを歌い終えた井ノ原快彦が、会場を埋め尽くすファンに向かって「俺たち3人がついてるぜ」と言うと、口笛のような歓声と笑顔が広がった。
トニセンとしてはじつに14年ぶりとなる全国ツアー。1月からスタートしたBillboard Liveに加え、2月2日の中野サンプラザを皮切りに、ホールライブも始まった(以下ネタバレを含みます。ご注意ください)。
ステージを覆うように噴き出した一面のスモークが晴れると、坂本昌行、長野博、井ノ原の3人の姿が浮かび上がった。8人編成の生バンドの演奏に、凝りに凝った照明。大人っぽく色気も感じさせながら、エンターテインメントもたっぷりのコンサートの始まりだ。
序盤で「Shelter」のイントロが流れると、会場に声にならない悲鳴のような音が漏れた。ロック感あふれる、かっこよさ満点の激しいダンスナンバーは、“伝説”とも呼ばれる、坂本のソロ曲。そのバックでキレキレに踊る、長野と井ノ原。3人の動きがきれいにシンクロし、会場を沸かせる。
のちのMCで、井ノ原が「リーダーもほんと、風に吹かれちゃってねえ」「リハーサルでもここ[中央の“お立ち台”]に立ち上がって腰振ってるから」「それを見たスタッフが『風用意しろ! 坂本さんに風だ!』」と、その経緯を明かした2番の演出も見どころだ。「ちょちょちょちょっと待って、腰は振ってない」と坂本が慌てて否定するとファンからは笑いが漏れる。
さらに、トニセンらしさが詰まっていたのが中盤の「トニセンハイテクミュージカル」だ。「雨の夜と月曜日には」「水曜日」と2曲続いたあと、突然流れるVTR。
井ノ原「まあ月曜日水曜日ときたら、金曜日行きたくなるけどね」
坂本「あーたしかにねー」
長野「金曜……フライデー……フライ、フライ、フライ……」
その言葉に重ねるように、14年前のトニセンコンサートで華麗なフライングを見せた長野の映像が流れる。「あー今回のライブ、フライングはできないんだよ」と言う井ノ原、「人間は、空を飛べないでしょ?」と諭す坂本に、長野は「俺は空を飛びたいんだよ!」と叫び、リハ室を飛び出してしまう。「飛べない俺はただの博だ……」とひとりごちる長野のロケ映像に、なんとか長野に空を飛ばせてあげたいと思い悩む井ノ原と坂本が舞台上で寸劇を繰り広げる。そして実現した、トニセンだからこそできる、新たなフライングの演出とは……?