「もう2週間も笑っていません」
「どうすれば笑えますか」
【調査結果】笑う人・笑わない人の要介護リスクはこんなに違う!
今、高齢者からそんな相談が介護施設など各所に寄せられているという。表情が乏しくなった人は、どこか元気がないように見える。
“笑い”は健康状態と関連するのか。名古屋大学大学院医学系研究科の竹内研時准教授の研究チームが、約1万4千人の高齢者(65歳以上)を対象に、「よく笑う人」と「ほとんど笑わない人」では要介護リスクに差があるのかを調査した。竹内准教授は言う。
「笑うことが健康にいいという研究はこれまでも多くされてきました。笑う頻度が少ないと、脳卒中や心疾患にかかる人の割合が高いのではないかという指摘もあります。ただ、一時的な観察による研究が多く、経年的に要介護状態との関連を調べた研究はありませんでした」
調査は2013年に始まった。要介護認定を受けていない高齢者にアンケートを実施。日常生活の中でどれだけ笑ったか、「ほぼ毎日」「週に1~5回程度」「月に1~3回程度」「ほとんど笑わない」の4択から答えてもらった。16年まで追跡調査を行い、「要介護2以上」の発生を調べた。要介護2は介護が必要な程度を7段階に分けたときに4番目に重い状態で、歩行や金銭管理などの能力が低下している人が多い。
調査結果によると、「ほぼ毎日笑う人」の要介護リスクを1とした場合に、「ほとんど笑わない人」のリスクは1.4倍にも上った。竹内准教授はこう解説する。
「『ほぼ毎日』と『週に1~5回』『月に1~3回』の間の微増微減は様々な要素を調整した後ではあまり差がないと考えています。対して、『ほとんど笑わない』人は明らかにリスクが高いと言えます」
コロナ禍による外出自粛などで、コミュニケーション不足が指摘される今、リスクは一層高まっていると見ていいかもしれない。竹内准教授は新型コロナに関連する調査研究に関わっていることから、こう話す。
「高齢者だけではなく成人も含む調査ではありますが、緊急事態宣言の期間中、約5人に1人が『笑いの頻度が減った』と回答していました。特に高齢者の中でも独居の方など、人と会う機会が少ない人は笑いの頻度が減っていることが考えられます。新型コロナの間接的な影響で要介護の発生が早まる可能性もあります」
とにかく笑うことが肝心と言える。だが、笑いにはクスッ、ガハハ、ニコリなどいろいろある。
「どんな笑いがいいのかというところまではわかっていません。ですが、運動を始めるのはハードルが高くても、笑うことは気軽にできますし、笑って悪いことは何もありません。生活の中で笑える環境作りを心掛けることが大事だと思います」