■睡眠不足じゃ太らない

 意外だったのは、睡眠の長さや社会的時差ボケとの間では体重変化との相関は見られなかったことだ。体重が増えた人も減った人も、睡眠時間が増加し、社会的時差ボケが減少していた。この結果は、睡眠不足や社会的時差ボケが肥満の要因とされてきた「定説」を覆すものだ、と柴田教授は指摘する。

「今回の研究成果は、睡眠不足や社会的時差ボケの解消よりも、朝型─夜型の変化、それに伴う活動量や間食、睡眠の質の変化が短期間の体重変化につながったと考えられるものです。つまり、外出自粛により平日・休日にかかわらず、睡眠時刻が朝型化(早寝、早起き)した人はやせ、夜型化(遅寝、遅起き)した人が太ったことが明らかになりました」

 とはいえ、夜型の人が朝型に変えようとしてもなかなか生活を切り替えられないのが実情だろう。朝型になりやすい、夜型になりやすいという傾向は、食事や就労パターンなどの生活習慣、夜遅くまでのスマートフォンの使用といった外的環境、体内時計をコントロールする「時計遺伝子」という遺伝的素因などの影響を受けるという。

 また、多くの研究で夜型は朝型よりも健康を害しやすい結果が出ているという。朝型に切り替えるにはどうすればいいのか。

「朝起きたらしっかり光を浴びる。朝食を取り、夕食は遅くならないようにし、夜食は夜型化するのでやめる。遅い時間帯のスマホはやらず、朝に回す。運動は朝から夕方までに行い、夜間はやらない」

 柴田教授は「朝型化」の方法をこうアドバイスし、今後の取り組みに意欲を示す。

「夜型の人は遅れやすい体内時計を持っており、朝型生活にトライしても気を抜くと夜更かしや朝寝坊をしがちです。今後、夜型化しやすさに負けないような生活習慣の提案やサプリメントなどを開発したいと考えています」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年11月9日号

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