安倍政権の継承を掲げて誕生した菅政権。自民党と連立政権を組む公明党の山口那津男代表は、両者の違い、所信表明で打ち出した「脱炭素社会」に向けて計画や課題などをどう見るのか。ジャーナリストの田原総一朗氏が聞いた。
【前編/なぜ公明党は「大阪都構想」賛成に転じた? 田原総一朗が山口那津男に聞く】より続く
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田原:菅(義偉)首相。安倍(晋三)前首相と比べてどうだろう。
山口:比べて言いにくい点もありますが、菅さんは極めて実務的で、わかりやすい目標を提示していると思います。携帯電話料金の大幅値下げや、不妊治療の保険適用など、そうした課題というのは国民から見てもわかりやすく、手に届きそうだという期待が持てる。それを実行するための閣僚や責任者の配置も期待感を抱かせます。代表質問でのやりとりを見ても、要所を押さえて答弁していると感じます。安倍さんは大きいテーマを掲げられました。しかし、どう実現するかについては不透明だったと思います。
田原:そうですか? 僕は逆でね。安倍さんのほうが非常にわかりやすい主張だった。憲法改正をしたい、主体性を持った安全保障にしたいと目標が明確だった。ところが、菅さんはこの国を一体どうしたいのかがわかりにくい。総理になっても官房長官の仕事の延長をやっているという印象。そして、今一番の関心は日本学術会議の任命拒否問題。どう見ています?
山口:政府の説明が、国民が十分納得できるまでは尽くされていないと思います。
田原:おそらく菅さんは説明できない。能力がないのではなく、無理だと思う。学術会議が推薦名簿を提出したのが8月下旬。まだ安倍内閣のときだ。安倍さんが政治生命を懸けてやろうとした安保法制、特定秘密保護法、「共謀罪」法に反対した学者を認めるわけにはいかなかった。禅譲された菅さんはそれをひっくり返せずに、大学が偏っていて平等じゃないとか、わけのわからないことばかり言っている。
山口:安倍内閣で官房長官を務め、安倍政権の基本的立場を引き継ぐとおっしゃっているわけですから、それが安倍さんの方針だとすれば、丁寧にわかるように説明しなきゃいけないですね。
田原:問題は、安倍政権のときからそうだけど、自民党の国会議員がみんなイエスマンということ。昔の自民党なら、森友・加計のような問題が出たら、安倍さんやめなさい、という意見が党内から出てきた。今は誰も言えなくなった。異論を許容する度量が今の自民党にはない。だからこそ山口さんがもっと言わなきゃ。