田原:戦争を知っている世代としては、日本は米国から、自制心のある自由と考えの違う人間を認める寛容さというデモクラシーを学んだと思っている。そのどちらもなくなってしまっている。
山口:米国社会のここ20、30年の変化が底流にあると思います。多様な人々が米国を構成するようになり、中産階級と言われる層が経済的に安定した生活を送れなくなってきている。
田原:4年前にトランプ氏が当選したのは、米国さえよければいいと公然と主張したから。グローバリズムを背景に経営者たちは工場を人件費が安い国に移したため失業者が増え、工業地帯は廃虚同然になった。難民移民の問題もある。これらにどう対応していけばいい。
山口:ラストベルトと言われる米国中西部は世界の鉄鋼業や自動車産業の一大集積地でした。それが製鉄については日本が取って代わり、今では日本の製鉄も中国などが取って代わりつつある。その意味で日本も米国と同じ道をたどっているわけです。世界の工場と言われる地域が転々とするのではなく、分担しながらお互いが共存できる関係を作り直す。そういう国際社会の動きが必要です。
田原:そこに新型コロナがやってきて、世界の分断が進んでいる。
山口:今、世界は米大統領選挙のように、米国と中国のどちらを選択するかの二者択一を迫られつつあります。日本は米国との同盟関係に加え、中国とは強い経済的な依存関係があり、地理的にも文化的にも近い。米中対立を対話による協調でつないでいくという役割を菅政権には期待したい。
田原:菅さんはそういう理念を持っていますか。
山口:対話と協調こそがこれからの国際社会の指導理念にならないといけません。我々からも求めていきます。
(構成/本誌・秦正理)
※週刊朝日 2020年11月20日号より抜粋
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