これに対し、佐々木監督は「よっしゃ~、とにかく行動あるのみ!」とばかりに速攻で誠意をアピールする。

 ドラフト翌日の11月22日、なんと、約120万円かけてヘリコプターをチャーターし、大阪・八尾空港から1時間40分かけて広島西空港(現広島ヘリポート)へ。

「熱血の押し売りやないでえ。少しでも早く、監督として(礒部への)気持ちを伝えたかった」と、取るものも取りあえず“恋人”のもとへ駆けつけた。

 演出効果満点の“ヘリ大作戦”に、礒部も「監督が直接来ることは予想してたけど、まさかヘリで来るとは……」と目を白黒。実は、前日の指名直後、友人に「近鉄に行くわ」と伝え、軟化しつつあった。そんな絶好のタイミングで、佐々木監督の熱意が大きく背中を押した。

「監督の熱意を感じたし、しかも、ドラフト翌日。前向きに考えます。ガッカリばかりはしてられない」と気持ちを切り替え、近鉄入りした礒部は、01年に外野手としてベストナインに選ばれるなど、チームの12年ぶりVに大きく貢献した。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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