待機児童問題解消のため急ピッチで増える保育園。だがその裏で、税金が原資の運営費をかすめとる“保育成り金”がはびこり、コロナ禍の中でも保育士たちからの搾取を繰り返している。「やりたい放題」のその手口とは。東京都への情報公開請求により、数々の不正が明るみに出た──。
【表】東京都の監査で指摘された保育園の「不適正な支出」を見る
名古屋市に本部がある社会福祉法人Fは、愛知県や都内に20カ所以上の保育園を運営している。都の資料によると、関東圏内の保育園からFの「東京本部」に資金が流用され、法人名義のクレジットカードを法人内の「個人」と「外部の者」が使った私的流用が指摘された。その額は4園で総額1600万円。なぜか各園ともぴったりと同じ金額が計上されていた。
Fには18年度は都内に4カ所ある認可保育園の全てに東京都の監査が入っており、うち3園は2年続けての監査。4園の違反項目は3年間の合計で43項目。都が監査に入っても文書指摘ゼロの保育園が約半数あるなか、違反が多いのは明らかだ。
指摘された不正支出についてF本部に取材を申し込むと、「行政との話し合いはついています。個別のことに関係するので」と断られた。
足立区の株式会社Kが運営する「K保育園」は「政党の支部」に対して5万円を交際費として支出していた。そのほか、個人の生命保険料が3社との契約で月5万円超、会社を被保険者とした倒産防止保険を月1万円かけていた。保育士の福利厚生を目的としたエステ代が年間60万円。個人が私的に利用する自家用車のガソリン代、駐車場代等維持費も計上されていた。
K社に違反の詳細や今後の改善策について質問を送ると、代表者からメールで次のような回答があった。
「保育力を高めることに尽力し、経営を後回しにした無知から不適正な支出と認識できなかった。(指摘のあったものは)解約、返金した。今は社会福祉会計に長けた会計士に顧問になってもらい、このようなことが二度と起こらないようにしています」