「閉鎖病棟は病状が不安定なときなどに入院する病棟で、出入りが制限されています。保護室は自殺のリスクがあるなど、いっそうの安全確保が必要な人のための病室で、出入り制限だけでなくきめ細かく観察できるような態勢がとられています。一時的に患者さんを危険から守るための場所で、治療で陽性症状が落ち着けば、一般病棟に移ることができます」
■急性期の終わりが退院の目安
急性期の期間は数週から数カ月。適切な治療を受けることで幻覚や妄想といった激しい陽性症状はおさまり、入院治療をしている人は、急性期の終わりが退院の目安になる。村井医師は言う。
「その後の回復の経過には個人差がありますが、このころになると、薬がどのくらい効いているか判断できるようになり、順調に職場復帰できそうだとか、少し長引きそうといったある程度の見通しがつくようになります。病気になったとたんにあわてて大学や会社を辞めてしまいがちですが、病気が始まったときは、まだ進路を変えるような判断をする段階ではありません」
また若い世代がかかりやすい病気だけに、「この先、どんどん悪くなっていくのでは」と心配する人も少なくない。
「統合失調症は進行性の病気ではありません。残念ながら徐々に悪くなってしまう方がいらっしゃるのは事実ですが、最も症状が重いのは最初の数年間で、その後は完治とは言えないまでも良くなっていくことが多いのです。また患者さん自身も、病気と上手に付き合っていけるようになります。治すべきときはしっかり薬を飲み、必要に応じて入院もして急性期を乗り越え、次のステップにつなげることが大事です」(同)
(ライター・熊谷わこ)
※週刊朝日 2020年11月20日号