ちなみに、近藤は結婚から13年間、子宝に恵まれなかったが、それは明菜の思いの強さのせいではといううわさがネットでささやかれたりした。
また、2014年の「紅白歌合戦」で活動を再開した際には、NHKホールでの歌唱ではなく、海外からの中継を選択。やつれた容姿や会場とのやりとりの不自然さから、録画出演ではないかという疑惑も浮上して「『怖いもの見たさ』の心理を掻き立てる演出」(週刊新潮)とまで報じられたものだ。
こうした存在から本格的に復活するには、公私いずれかの変化で健在ぶりを示すしかないが、おそらく今はそれも難しいのだろう。それゆえ、ファンは何もかもあの破局、さらにいうなら「マッチのせい」だという物語に落とし込もうとする。もちろん、明菜本人の思惑、たとえば今回の不倫騒動についてどう考えているかもわからないものの、そういう物語なしではもっとやりきれなくなるのだろう。
なので今回、ジャニーズが近藤に厳しい対応をすれば、明菜ファンの留飲もちょっとは下がるに違いない。ただ、明菜の状況が変わらない限り、ファンの怨念は消えないのではないか。それこそ「あそこまでひどい男とは。そのせいで人生も台無しにされて」と、ますます同情し続けることになるはずだ。
それもこれも、明菜のたぐいまれな「負のオーラ」によるもの。かつて、作品に昇華されていたその魅力は今、ファンの恨みつらみの源泉でしかない。
マッチの不倫はそのうち忘れられても、この破局はまだまだ終わらないのだろう。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など