こうした直観、ひらめきはいかにして得られるのでしょうか。博士は「戦略とは、無から創造されるものではなく、また過去の成功例の単純なコピーも通用しない。戦略とは、過去の成功例の『創造的な組合せ』によってもたらされるのだ」と話しています。

 そして、軍事戦略家のクラウゼヴィッツ(1780~1831)が『戦争論』で語っている方法が有効だというのです。それは以下のような4段階で成り立っています。

(1)歴史の先例(2)平常心(3)ひらめき(4)意志の力

 まず歴史上の先例をしっかり頭に入れます。いったん頭に入れたら、それにとらわれずに平常心に戻ります。この平常心とは江戸時代の沢庵和尚が説いた不動智のようなものでしょう。つまり、四方八方、右左と自由に動きながらも、決して一つの物、一つの事にとらわれない心です。不動智が得られたら、いずれひらめきが生まれます。そしてそのひらめきを意志の力で実行に移します。

 この戦略的直観は医師が医療を行う場合だけでなく、患者さんにも必要です。自分の治療法を選ぶのには直観が必要なのです。みなさんも戦略的直観を磨いてください。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2020年11月27日号

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