■慣れずに基本の徹底を

 次はお風呂。年末年始は帰省などで普段は離れて暮らすお年寄りと一緒に生活する機会も多い。重症化リスクが高いお年寄りが最初にお風呂に入った方がよい、という説もあるようだ。菅原さんは言う。

「もし万が一、ウイルスを持っている人がお風呂に入ると、壁やタイルにウイルスが付着する可能性はあります」

 新型コロナウイルスは、たとえばプラスチックの上では3日間など、ものの表面で一定期間、生き延びる。とは言えお風呂なら自然に水で流されていくので、それほど注意する必要はないのではと菅原さん。

「ただ、浴室内の空気中にウイルスが舞う可能性はありますし、その後に入ったお年寄りがそれを吸入することはあり得るとは思います。その意味では、お年寄りを新鮮な空気のお風呂に最初に入れてあげるのは意味あることかもしれません」

 年末年始はクリスマスや初詣など人混みの中に出かけるシーンも多い。初詣はいかにも「密」という感じだが……。

「初詣はほとんどが屋外で過ごすので密閉状態は避けられる。あとは『そこに滞留すること』をできるだけ避けるようにしてください」

 マスクを忘れず、他人とは自覚的に距離を置く。お参りが終わればすぐに立ち去る。参道の露店などでの飲み食いも、今年はあきらめよう。

「また、初詣は2月3日の節分までに行けば間に合うとされていますので、できるだけ三が日に集中しないよう、分散を心掛けることも大切です」

 さらに拡大の予感がある第3波。日々の生活でもより一層の注意が必要だが、あらためて考えても、難しいことはないように思える。菅原さんは言う。

「マスクと適切な手洗い、人混みの中に行かず換気のいい場所にいる。基本はそこに尽きると思います。ただ、やはり人間は必ず、状況に慣れてきてしまいます。どうしても緩んでくる。やるべきことはすごく単純なことなので、一人ひとりがそれを忘れないで継続していく力、気持ちが重要だと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2020年11月30日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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