日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「いま必要なコロナ対策」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
* * *
先月21日、政府は新型コロナウイルス感染者数の急増を受け、「Go To」キャンペーンの運用を見直すことを表明しました。政府はこれまで、「Go To」キャンペーンにまつわる事業が感染拡大の要因になっている証拠はないとし、事業を継続する方針としていましたが、一転、見直しに転じたかたちとなりました。
全国的に新型コロナウイルス感染症が拡大し続けるなかで、税金を投じて人の移動を促すことを続けていたら、感染を拡大させるだけでなく、経済も悪化するのは明らかです。実際に、日本の「Go To Eat」に似たキャンペーンが夏季に英国で実施されたのですが、英国における新型コロナウイルス感染拡大の要因だったことが調査結果でわかっています。
英国で実施された、新型コロナ感染症から打撃を受けた外食産業を支援する経済策は「Eat Out Help Out」。8月の月曜日から水曜日に、対象の飲食店で食事をすれば、アルコールを除く飲食代の最大50%分を政府が負担する(上限1人10ポンド、利用できる回数に上限なし)というものでした。
調査結果によると、新たに発生した新型コロナウイルス感染症のクラスターのうち、8%から17%は「Eat Out Help Out」に起因するものであり、「Eat Out Help Out」に参加したレストランでは、2019年と比べ来店者数が10~200%増加したものの、キャンペーン終了後にはレストランの客足も激減したため、経済効果は長く続かなかったこと、さらにはキャンペーン参加のレストランが多い地域では、キャンペーン開始から1週間ほどしてから、新規の新型コロナ感染者のクラスター発生が顕著に増加し、 キャンペーン終了に伴いクラスターの発生も著しく減少したことが分かったと言います。