バセドー病は専門医にかかり、メルカゾールという薬を服んで四年後におさまったが、その五年後に再発し、また二年、薬を服んでおさまった。完治ではなく、いまは寛解という状態だろう。

 痛風はこの二十年で十数回、発作が出た。痛いのは確かだが、“風が吹いても痛い”というほどではない。ただ、尿酸値が高いと血管を傷めるらしいから、痛風の薬は欠かせない。

 四十代の半ば、前庭神経炎という病気にも襲われた。夜、原稿を書いているときにひどい目眩(めまい)がし、床に倒れても天井がぐるぐるまわっている。洗面器いっぱいに嘔吐(おうと)し、担架に乗せられて救急病院に運ばれた。目眩はバセドー病や痛風よりつらい。寝ても起きても吐き気がする。このメニエール病にも似た症状は一年ほどもつづいたが、メリスロンとセファドールという薬を服みつづけてなんとか治った。

 毎週、テニスをして走りまわっているから、わたしのことを“元気な爺(じじい)”とみんなはいうが、ほんとうは蒲柳の質なのだ。麻雀で勝っているとき「しんどい。もう寝よ」といい、負けているとき「まだ、やめへんぞ」というのは、セコいからではありません。

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)/1949年生まれ、大阪府在住。86年に「キャッツアイころがった」でサントリーミステリー大賞、96年に「カウント・プラン」で日本推理作家協会賞、2014年に『破門』で直木賞。放し飼いにしているオカメインコのマキをこよなく愛する

週刊朝日  2020年12月11日号

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