(1)は糖分の取りすぎ。(2)は運動不足で糖を吸収する筋肉の量が減ると、行き場のない糖が血中に回ってしまう。また、朝食を抜くと低血糖になる。その状態で食事、とくに早食いをすると急激に糖が吸収されるためだ。

 コロナ禍で同クリニックに通院する患者の7割で血糖値の悪化が見られたという。

「リモートワーク(在宅勤務)で、オンラインでの会議や面談が増え、逆に忙しくなったと話す患者さんは多いですね。深夜までパソコンの前から離れず、食べやすいおにぎりやサンドイッチを放り込む。気づくと、何日も家から出ていないと訴えています」

 血糖値スパイクの影響は、パニック障害やうつ病など心のトラブルにもつながりかねない。新宿溝口クリニック(東京都新宿区)では、心身の不調で来院した患者のなかには血糖値スパイクが原因だと判明するケースが少なくないという。

 脳神経外科の専門医でもある青山尚樹副院長は、血糖値スパイクで上昇した血糖値が急下降して低血糖の状態になる、この谷底の血糖値こそが問題だと見る。

「今度は下がりすぎた血糖値を上げようと、(怒ったり緊張したりするときに分泌される)アドレナリンや(ストレスを感じると分泌される)コルチゾールなど複数のホルモンが放出されます。それが自律神経を乱し、イライラやうつ症状、パニック症状など心のトラブルを引き起こすのです」

 青山副院長は予防のため、適度な運動や規則正しい生活のほか、食事の順番も指導している。野菜や海藻などの食物繊維、肉や魚などのおかず(たんぱく質)、少量のご飯・パン(糖質)の順で、糖の吸収を穏やかにするためだ。また、栄養ドリンクを常飲したり、ワインや日本酒の晩酌の習慣があったりする人にも注意を呼びかける。すべて糖の塊だからだ。

 コロナ禍で巣ごもり生活が続く高齢者は、特に注意してほしいという。

「デイサービスや散歩を控えるようになれば、明らかに運動不足になる。さらに女性は甘いものが好きですから、間食が増えてしまう方が多いのです」

 健康を第一に過ごしてほしい。

(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2020年12月11日号